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赤い靴 [DVD]
赤い靴 [DVD]
エメリック・プレスバーガー
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定価: ¥ 3,990
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人気ランキング: 60450位
おすすめ度: 
発売日: 2000-07-28
発売元: 東北新社
愛か芸術か、それが問題だ
劇中の「赤い靴」のバレエが、そのまま登場人物のドラマに重なるという演出は、後の名作『恋におちたシェイクスピア』にもしかしたら影響をあたえたのかもしれない。
至高の芸術には愛は邪魔者と考えるワンマンプロデューサー・レドモントフ。彼に見出された若き天才ダンサー・ペイジと作曲家クラスター。レドモントフとペイジが出会うシーンでの会話は趣深い。
「なぜ君は踊るのか」
「あなたはなぜ生きるの?」
「なぜだかわからないが、生きなければならない」
「それと同じよ」
この映画のハイライトは、なんといっても「赤い靴」のバレエシーン。実際のバレエと映画の特殊効果をシンクロさせたシンボリックな映像は非常に美しく、けっしてわざとらしくならない格調を保っている。邪悪な魔力を秘めた赤い靴をはいたがために死ぬまで踊り続けるハメになった少女の運命が、天才プリマ・ペイジの実人生と見事にオーバーラップする演出がすばらしい。
バレエ後進国の英国では、本作品や『リトルダンサー』のようなバレエ映画の傑作が、なぜか生まれやすい土壌にあるようだ。
バレエ映画の傑作
1948年制作。バレエが今より「魔術」を持っていた時代の作品。
主演のモイラ・シアラーは当時英国ロイヤル・バレエ団のプリマで映画出演に乗り気ではなかったが、制作側の熱心さに折れての出演だった。
シアラーは天才的なバレリーナだったが引退が早かった。マーゴット・フォンテインとのライバル関係に敗れた感のある人だが、天才振付家ジョージ・バランシンなどはフォンテインよりもシアラーを高く評価していたのだがら、惜しいキャリアのバレリーナだった。
シアラーの踊りは素晴らしい。軸を外しても体が躍動している。バランシン好みのピュアダンサーだ。
映画の大筋の「悲劇」はディアギレフとニジンスキーの実話からヒントを得たのだろうが、あまり説得力がない。しかし別の部分、時代の空気やバレエ団内部の様子がとても魅力的。
シアラー以外にもレオニード・マシーンやロバート・ヘルプマンといったバレエ界の名士が出演している。劇中バレエの振付はヘルプマン。彼は振付家としては大成しなかったが、この映画で多くの人に自分の振付を見てもらえたことになる。
しかしこのバレエ団は私設だろうか?絶対に財政難だったはず。そんな中で、新作バレエの資金調達をし(←なんて場面はないが)我の強いアーティスト集団をまとめていく団長のレルモントフはすごい男だ。多少(かなりか)理不尽でも許したくなるぞ。ヒロインはイモ臭い作曲家なんかより団長とくっつけばいいんだ、と感じるヒトもいるはず。しかし、バレリーナを独占はしたいが恋愛対象にはしない、というレルモントフの純粋主義というか観念性、映画を引き締めているのはこれだろう。
西欧文化の型の恐ろしさにゾッとする
製作されてからやがて60年になろうというのに少しも古臭さを感じません。飛び切り美しい映像にもよるのでしょうが、思想的な堅固さもあることを見逃せません。
導入部で伯爵夫人と会話するレルモントフが「バレエとは何だと思いますか?」と質問し、相手が程度の低いことを言うとすかさず「私にとってバレエは信仰です」と、ビシッと決め付けました。罪の文化の社会では信仰には重い意味があるので、伯爵夫人はグウの音も出なくなりました。
それだけに、ヴィッキーの天才を認識した彼は恐るべき思想の塊りになりました。ヴィッキーをもはや人間と見ず、芸術の理想を実現する媒体として扱ったのです。映画の終わりに近いところでジュリアンと言い争ううちにこんなやりとりがされたのはその思想の現われです。
(レル)「君が彼女を連れて行ってから、来る日も、来る日も、取り返す機会を待っていたのはなぜだと思ってるんだ。」
(ジュリ)「妬いていたからだろう。」
(レル)「そうとも。だがな、お前なんぞには到底分からんことで妬いていたんだぞ。」
結局ヴィッキーは、なま身の人間として耐えられる限界を超えた理想の要求のために生きる道を失って自ら命を絶ってしまったのです。
恥の文化の国日本では「恩」や「義理」のために人の命が消耗されることがありますが、罪の文化の西洋では「信仰」や「理想」のために同様のことが行なわれる場合があるのです。製作者がそういうことを意識していたかどうかは分かりませんが、人間の在り方をとことん突き詰める姿勢をもっている西洋人が映画を作るとこういう作品ができるのでしょう。
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